個人と共同体

人の記憶

人はなぜ他人の人生に興味を持つのか

夜更けの町中華で餃子をつまみながらビールを飲んでいると、時折、奥のテーブル席から話し声が聞こえてくることがある。聞こうとしているわけではない。それでも不思議なもので、話の断片が耳に入ると、つい意識が向いてしまう。「それで結局、会社辞めたんだ...
人の記憶

私は食べたことがない ― 消えゆく郷土菓子『つみかん』の話

『画像のつみかんはイメージ作製したものです』愛媛県松山市には、「つみかん」という郷土菓子があった。「あった」と過去形で書くのは、私自身が一度も食べたことがないからである。地元で生まれ育ったにもかかわらず、その存在を知った頃には、すでにほとん...
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サンイートと、パンと、若い頃の空腹

サンイートのパンを知ったのは、美術学校に通っていた知人の生徒さんがきっかけだった。地元では昔から親しまれているパン屋で、コロッケパンやカツパンなど、惣菜を使ったボリュームのあるパンが並んでいる。洒落た店ではない。だが、学生や若い人たちの財布...
人の記憶

「ねるねるねるね」考察

― 「練る」という文化を遊ぶ駄菓子 ―私が「ねるねるねるね」と再会したのは、姪がまだ幼かった頃のことでした。久しぶりに口にしたその味は、子どもの頃の記憶とは少し違います。酸味の強いラムネの風味は、正直に言えば飲み過ぎた午後の胃酸を思わせるよ...
人の記憶

映画が教えてくれた、本当に格好いい男とは。

若い頃、私は映画に出てくる男たちに憧れた。ギャング映画に登場するダブルのスーツ。帽子を深く被り、煙草に火を点ける姿。酒場で流れるジャズ。そんな世界に、「大人の格好良さ」が詰まっているように思えた。『マック・ザ・ナイフ』を初めて耳にした頃も、...
人の記憶

子供服売り場で見つけた、私のクラシックパンツ

人は年齢を重ねると、自分に似合うものを探し始める。私も例外ではなかった。映画に登場するギャングや刑事たちのように、クラシックなスーツを着こなし、自分なりのスタイルを持ちたい。そんなことを考えていた時期がある。ズートスーツに憧れ、実際に仕立て...
人の記憶

しまなみ海道は橋を渡る旅ではない ― 島の風土と焙烙焼きが教えてくれるもの

瀬戸内海に浮かぶ島々を橋で結ぶ「しまなみ海道」。多くの人は、美しい景色や日本屈指のサイクリングロードを思い浮かべるでしょう。しかし、この道の本当の魅力は、海の上を走ることだけではありません。橋が架かる以前、それぞれの島は船でしか行き来できな...
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魅+夜話 第15話 結び ― 記憶は、店ではなく人に残る

今思えば、私はあの店の味を覚えていたわけではないのかもしれない。覚えていたのは、ラーメンでもスパゲティでもなかった。そこにいた人たちの気配だった。熊さんの声。白いシャツに短髪の姿。忙しそうに店内を歩き回る足取り。そして厨房の奥で、ふと現れる...
人の記憶

魅+夜話 第14話 熊さんの話

🐻 熊さんと、渡せなかった黒いボータイ面白いのは、その人を思い出すとき、料理の味ではなく別のものが先に浮かぶことだった。スパゲティの味ではない。体格。短い髪。よく通る声。そして、白いシャツ姿。料理よりも先に、その人の“輪郭”のようなものが記...
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最終回 なぜ農夫の身体は美しく見えるのか――熟練者が未来を読む理由

最近は身体を鍛える人が増えた。ジムに通い、食事を管理し、自分なりの理想の身体を目指す。それ自体は良いことだと思う。健康にもつながるし、継続すること自体が簡単なことではない。だが時々、それとは別の種類の身体に目を奪われることがある。農作業の途...