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コタツから退去する猫と、残される人間

気候も暖かくなり、次第にコタツの中に猫の姿が見えなくなってきた。あれほどまでに占拠されていた空間が、まるで何事もなかったかのように空いている。誰に言われたわけでもないのに、猫たちは季節の変化を察知して、静かに撤退していく。人間が「そろそろ春...
観察記

キャットタワーは誰のものか——ミーガンが占領した夜

映画の M3GAN を流し見していて、妙に引っかかった場面がある。人型ロボットであるはずの彼女が、攻撃に転じた途端、四つ足で床を這うように迫ってくるあの動きだ。人間の形をしていたはずのものが、突然「人間であること」をやめる。あの違和感は、た...
観察記

春来る鬼

春らしい気候になって来た。石手川公園の桜も、ちらほらと開花している木が見える。昼間の気温はすでに高く、春先というよりは、どこか初夏の気配すら混じっている。季節は余韻を残すことなく、次へと進もうとしているようだ。すでに夜桜用の提灯型の電球が張...
観察記

自由に憧れる人間と、翼を持たない猫の話

人はなぜ、空を欲しがるのだろうか。地面には道がある。信号があり、順番があり、渋滞がある。それらすべてを飛び越えて、どこへでも行ける存在。その象徴として、映画や物語の中では何度も「飛ぶもの」が描かれてきた。その姿は、どこか理想的に見える。自由...
観察記

空を走る車はなぜ現実にならないのか

夜中に映画を流し見していると、現実の輪郭が少しだけ緩む。物語を追いかけているつもりが、ふと意識が逸れて、別のことを考え始める。画面の中では何かが起きているのに、頭の中では別の風景が動き出す。そんな曖昧な時間の中で、空を滑るように走る車が視界...
観察記

猫跨ぎにもならない朝

夜勤明けの明け方、職場での些細な啀み合いを持ち帰った。胸の奥に、不完全燃焼のような鬱憤が残っている。本来なら、そのまま一日を台無しにするには十分な量だ。人間同士なら、ここからさらにこじらせることもできる。だが帰宅してみると、その前提が少し揺...
食と記憶

匂いで呼び起こされること。

昼時になると、下の階から甘く柔らかな味噌の香りが漂ってくる。匂いだけで、白味噌のまろやかな甘みや舌触りまでがふと呼び起こされる。愛媛の白味噌は、甘めで優しい味わいが心に残るのだろう。農家の昼食は手軽さと腹持ちが重視される。大きめのおにぎりに...
観察記

夜の巡回者 — 見えない秩序を歩く三毛の月

夜更けになると、我が家の空気はゆっくりと形を変える。つい先ほどまで、ただの三毛猫だった月が、静かに起き上がる。そして、何事もなかったかのように巡回を始める。決まったルートを辿り、足音を立てずに部屋を横切り、見えない境界線をなぞるように、ゆっ...
観察記

湯気の向こう側

月丸は、もうコタツの中にいる。宴は終わり、誰も振り返らないまま夜は閉じた。私はチャイを淹れる。アルコールではなく、水でもなく、少しだけ香りと熱を持ったもの。カップから立ち上る湯気の向こうで、さっきまでの気配がぼんやりと揺れる。だが、それも長...
観察記

夜更けの残り香

夜中の3時過ぎ、トイレに立ったついでに階段へ目をやると、月丸が上段に座っていた。あれほどまでに騒がしかった気配は、すでにどこにもない。家の中は、拍子抜けするほど静まり返っている。ほんの2〜3時間前までは、あの一帯が運動場だったはずだ。足音と...