観察記

自由に憧れる人間と、翼を持たない猫の話

人はなぜ、空を欲しがるのだろうか。地面には道がある。信号があり、順番があり、渋滞がある。それらすべてを飛び越えて、どこへでも行ける存在。その象徴として、映画や物語の中では何度も「飛ぶもの」が描かれてきた。その姿は、どこか理想的に見える。自由...
観察記

空を走る車はなぜ現実にならないのか

夜中に映画を流し見していると、現実の輪郭が少しだけ緩む。物語を追いかけているつもりが、ふと意識が逸れて、別のことを考え始める。画面の中では何かが起きているのに、頭の中では別の風景が動き出す。そんな曖昧な時間の中で、空を滑るように走る車が視界...
観察記

猫跨ぎにもならない朝

夜勤明けの明け方、職場での些細な啀み合いを持ち帰った。胸の奥に、不完全燃焼のような鬱憤が残っている。本来なら、そのまま一日を台無しにするには十分な量だ。人間同士なら、ここからさらにこじらせることもできる。だが帰宅してみると、その前提が少し揺...
食と記憶

匂いで呼び起こされること。

昼時になると、下の階から甘く柔らかな味噌の香りが漂ってくる。匂いだけで、白味噌のまろやかな甘みや舌触りまでがふと呼び起こされる。愛媛の白味噌は、甘めで優しい味わいが心に残るのだろう。農家の昼食は手軽さと腹持ちが重視される。大きめのおにぎりに...
観察記

夜の巡回者 — 見えない秩序を歩く三毛の月

夜更けになると、我が家の空気はゆっくりと形を変える。つい先ほどまで、ただの三毛猫だった月が、静かに起き上がる。そして、何事もなかったかのように巡回を始める。決まったルートを辿り、足音を立てずに部屋を横切り、見えない境界線をなぞるように、ゆっ...
観察記

湯気の向こう側

月丸は、もうコタツの中にいる。宴は終わり、誰も振り返らないまま夜は閉じた。私はチャイを淹れる。アルコールではなく、水でもなく、少しだけ香りと熱を持ったもの。カップから立ち上る湯気の向こうで、さっきまでの気配がぼんやりと揺れる。だが、それも長...
観察記

夜更けの残り香

夜中の3時過ぎ、トイレに立ったついでに階段へ目をやると、月丸が上段に座っていた。あれほどまでに騒がしかった気配は、すでにどこにもない。家の中は、拍子抜けするほど静まり返っている。ほんの2〜3時間前までは、あの一帯が運動場だったはずだ。足音と...
観察記

「普通の顔」が一番怖い理由

イコライザーの主人公のような人物が、もし同じ職場にいたとしたら――。多くの人は「頼りになる人」と評価するかもしれない。無駄口を叩かず、仕事は正確で、感情の起伏も少ない。だが私は、ああいう人間には近づかない。理由は単純で、理解できないからだ。...
創作と試み

木村庄之助に学ぶ「遊びの美学」——スカジャン風作務衣を作ってみた

テレビをほとんど見ない生活をしていると、世間の関心から少しだけ外れたところに、妙に気になる存在が現れることがある。大相撲もその一つだ。力士の四股や勝敗ではなく、なぜか目に残るのは行司の所作や装い。中でも最高位の行司である木村庄之助という存在...
観察記

漫画『出禁のモグラ』の疫病神から学ぶ、家族や身近な人間関係の救い方

漫画や物語に登場する「疫病神」という存在は、災いをもたらす怖いキャラクターとして描かれることが多いです。でも、少し視点を変えると、私たちの身近な人間関係の問題を考えるヒントを与えてくれる存在でもあります。胡散臭く見えたけれど、実は寄り添う存...