チャンネル銀河で、競輪選手の裏側を紹介する番組を流し見している。
競輪選手という仕事は、改めて見るとなかなか過酷である。
あの太い大腿部も、ただ自転車に乗っているだけで出来上がるものではない。レッグプレス400kgなんて数字まで出てくると、こちらとしては「400kg……」と呟くしかない。
毎日の鍛錬で脚を作り、上半身や体幹も鍛える。
さらにバンクの上では、高速で走りながら他の選手との駆け引きもしなければならない。
恐怖心だってあるだろう。
それを乗り越えて、最後の勝負どころで踏み込む。
一流の競輪選手になるには、単純な脚力だけではなく、身体と精神の両方を鍛え続けなければならないようだ。
そんな番組を眺めていて、ふと思った。
我が町にも市坪競輪場がある。
そして私の職場には、地方から競輪選手の自転車が流れてくる。
競技用の自転車そのものは7~8kgほどしかない。
軽い。
さすがは競技用である。
しかし、それを裸のまま運ぶわけにはいかない。
大事な商売道具を守るためのケースに入れられてやって来る。
このケースが、なかなか重い。
選手にとっては、賞金を稼ぐための大切な道具。
私にとっては、腕と背筋と腰のひねりを使って扱う荷物である。
競輪選手が脚を鍛えている横で、私は別の筋肉を使っている。
ただし、こちらの鍛錬には賞金が付いてこない。
賞与も賞金も出ない。
いつもの給料である。
競輪選手が「脚で稼ぐ仕事」なら、私はその商売道具を運ぶ仕事。
そう考えると、競輪という世界のかなり端っこの方には、私も少しだけ関係しているのかもしれない。
もっとも、最近は別の意味で重量が気になるようになった。
仕事では競輪用自転車のケースだけでなく、電動機付き原付自転車なども扱う。
これがまた重い。
「こんなもの運ばせるなよ……」
と思うこともある。
ところが、ネットで乗り物を眺めていると、最近の原付はデザインがなかなか格好いい。
「これ、ちょっと欲しいな」
と思って仕様を見てみる。
すると車両重量が、とんでもない数字だったりする。
その瞬間、購入意欲が少し冷める。
写真では軽快に見えるのに、現場で実物を扱っている人間からすると、
「お前、そんなに重かったのか……」
となる。
さらに同居人が欲しがっている原動機付ジープモデルのことを考える。
あれも相当な重量なのだろう。
もし本当に我が家へやって来たら、乗っている時間よりも、家の片隅に鎮座している時間の方が長いのではないか。
そう考えると、ちょっと抵抗感が湧いてくる。
乗り物は走っている姿を見ると格好いい。
しかし物流の現場にいると、別の顔が見えてしまう。
「それ、何kgあるんですか?」
である。
競輪選手は、軽量な自転車を操りながらバンクを駆け抜ける。
その自転車を守るケースを、誰かが運ぶ。
さらにその横では、もっと重量級の乗り物を誰かが運んでいる。
表舞台では脚で賞金を稼ぐ選手がいる。
その裏側では、賞金とは無縁の腕と背筋が商売道具を運んでいる。
そして私は今日も、ネットで格好いい乗り物を見つけるたびに思う。
「これ、何kgあるんだろう……」
昔なら「格好いい」で終わっていたものが、今では重量を確認してしまう。
これもまた、仕事によって身についた職業病なのかもしれない。
ただ、できれば家の片隅には、あまり重量級のものを増やしたくない。
こちらはレッグプレス400kgを目指しているわけではないのだから。



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