タツノコプロといえば、『科学忍者隊ガッチャマン』や『新造人間キャシャーン』、『タイムボカン』シリーズなど、個性的なキャラクターやメカが活躍するアニメを思い浮かべる人が多いと思います。
そんなタツノコプロが、少年ジャンプの作品をアニメ化していたことがあります。
それが『よろしくメカドック』です。
原作に登場する車たちは、当時の少年たちにとって憧れの存在でした。
中でも印象に残っているのが、警官の娘で「女暴小町」の異名を持つ女性です。
ヨタハチことトヨタ・スポーツ800を巧みに操り、ひとりで暴走族のように走り回る。
漫画として読めば、実に格好いい。
ただ、私はこのあたりを素直に楽しめないところがありました。
何しろ、この世代の車に実際に苦しめられた人間です。
「いや、こんな訳ねーだろ」
漫画を楽しみながら、そんなツッコミを入れていました。
そして、女暴小町の後に登場する車の中に、ホンダ・シティがあります。
この車には、私自身にも妙な因縁があります。
シティは、私が初めて乗ったオートマ車だったのです。
もちろん新車ではありません。
中古車で、ドアミラーになる前の初期型でした。
漫画の中では小さくて軽快なシティですが、私の知っているシティは、そんな爽やかな車ではありません。
まず、やたらとハンドルが重い。
当時の私は「これが普通なのか?」と思いながら運転していました。
ところが、それだけでは終わりません。
エンジン系統にも問題があったらしく、オートマ車なのにエンストする。
「オートマなのにエンストするのかよ」
初めて乗るAT車としては、なかなか恐ろしい洗礼でした。
しかも、この車を購入した経緯まで、今となってはちょっとした黒歴史です。
母親と親交のあった、地元の駐在所に勤めていた警察官のお爺さんから持ち込まれた車でした。
地元の警察官といえば、普通なら何となく信用できそうな響きがあります。
ところが、この爺さんには、昔からアコギなことをしでかす癖があった。
そして私は、その人から見事に粗悪な中古車を掴まされたわけです。
『よろしくメカドック』では、シティが若者の夢を乗せて走っている。
私の現実では、ハンドルは重い、エンストはする、しかも売ってきた相手まで一筋縄ではいかない。
同じシティでも、漫画と現実ではずいぶん違います。
だから私は、旧車を見て「懐かしいなあ」と簡単には言えません。
その車が実際に走っていた時代を知っている。
そして、その車に乗って苦労した記憶まで残っている。
漫画の中では格好いいヨタハチも、シティも、私にとっては単なる昭和の名車ではありません。
むしろ、
「昔の車って、こんなに大変だったんだぞ」
と言いたくなる存在です。
それでも不思議なことに、こうして『よろしくメカドック』を読み返すと、やっぱり面白い。
現実では散々苦労させられた車たちが、漫画の中では実に楽しそうに走っているからです。
たぶん私は、旧車そのものを懐かしんでいるのではありません。
旧車に振り回されていた、あの頃の自分まで含めて眺めているのでしょう。
漫画の中では華麗に走るシティを見ながら、
「いや、俺の乗ってたシティはこんなんじゃなかったぞ」
と缶コーヒーでも飲みながら突っ込む。
それくらいの距離感が、私にはちょうどいいのかもしれません。



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