ホンダ・シティが発売された頃には、小さくて小洒落た車がいろいろと存在していた。
その中でも、スズキのマイティーボーイは独特だった。
「金はないけどマイティーボーイ~♪」
CMの歌まで覚えている。
40万円台で新車が買える。
財布には優しい。
ただ、車そのものを眺めていると、私はどうしても一つ気になる。
「これ、二人しか乗れないんだよな……」
マイティーボーイは、後ろが普通の乗用車の後部座席ではない。
そこは荷台やちょっとした荷物置き場として使う空間だった。
つまり、人を乗せることを考えれば二人が限界。
二人で乗って、後ろには荷物を載せる。
そう考えると、だんだん別の車が頭に浮かんでくる。
軽トラックでいいんじゃないか?
軽トラックなら、最初から荷物を運ぶことを目的に作られている。
二人乗り。
後ろは荷台。
構造も用途も分かりやすい。
それに比べるとマイティーボーイは、乗用車なのかトラックなのか、あるいはその中間なのか。
何とも不思議な立ち位置にいる。
もちろん、そこが面白いところなのだろう。
「普通の軽トラックでは味気ない」
「でも乗用車ほど大きな車はいらない」
そんな人には、この妙な組み合わせが魅力だったのかもしれない。
ただ、私が実際に買う立場だったら、
「だったら軽トラを買うぞ」
となる。
マイティーボーイそのものを否定しているわけではない。
むしろ、こんな車を本気で商品にしてしまったところは面白いと思う。
ただし、面白さと実用性は別の話である。
小さい。
安い。
二人乗り。
後ろは荷台。
それなら軽トラックという、もっと分かりやすい答えがすでにある。
だから私にとってマイティーボーイは、やっぱり「名車」というより、
「面白い迷車」
なのである。
子供の頃には、叔母が中古の普通車を80万円で買ったと聞いて、
「マイティーボーイが二台分だ」
などと考えていた。
40万円台の車が二台で80万円。
幼い私には、それだけで十分な比較だった。
今になって考えてみると、80万円あればマイティーボーイを二台買える。
しかし、
「二台もいらない。一台なら軽トラでいい」
となってしまう。
どうも私は昔から、車を「名車だから」という理由では見られないらしい。
格好いいことより、実際に人間が乗って使えるかどうか。
洒落ていることより、扱いやすいかどうか。
そして何より、
「これ、何のために作ったんだ?」
と笑える余地があるかどうか。
マイティーボーイには、その「何でこうなった?」という面白さがある。
だから私は、頭を下げて名車として拝むつもりはない。
ただ眺めながら、
「まあ、お前も頑張ったな」
くらいでいい。
それが私にとっての、マイティーボーイとの付き合い方なのだ。



コメント