「名物とは、地元民が名物だと思っているものとは限らない」

個人と共同体

地元に住んでいると、そこにあるものの特殊さにはなかなか気づかない。

毎日のように食べているものなら、それは名物ではなく、ただの昼飯である。

昔から続いている風習なら、それは伝統文化というより「昔からそうだったもの」だ。

方言だって、自分たちにとっては普通の言葉でしかない。

ところが、県境を越えた途端に「へぇ~」と言われる。

「そんな食べ方するの?」

「その言葉、そっちでは普通なの?」

「それ、全国どこにでもあるんじゃないの?」

そこで初めて、自分たちが当たり前だと思っていたものが、どうやら少し特殊だったらしいと気づく。

今回、さとのか4Kで流し見していた『イッツァ麺ワールド』の富士宮焼きそばを見ていて、そんなことを考えた。

富士宮の人たちにとっては、昔から食べてきた焼きそばである。

だから町おこしの話が出たときに、地元から「何で?」という声が出たというのも、何となく分かる気がする。

「いや、焼きそばですよ」

そんな感覚なのだろう。

けれど、外から見れば普通の焼きそばとは少し違う。

蒸したビーフンのような弾力のある麺。焼き上げても、油をまとったやや透明な麺にはツヤが残っている。

そして仕上げに鰹節ではなく、鰯の削り粉。

これが妙に効いていて、食べ終わったあとも魚の旨味が舌に残る。

地元の人には「いつもの焼きそば」。

他県の人には「へぇ~、こんな焼きそばがあるのか」。

この差が、地方の風習や文化なのかもしれない。

地元に住んでいる人間にとっては、特殊なものほど当たり前になっている。

だから「これは文化です」と言われても、いまひとつピンとこない。

文化というのは、博物館に展示されているものだけではない。

台所にあり、食卓にあり、商店街にあり、毎日の会話の中にある。

あまりにも生活に近いため、自分たちでは価値に気づかない。

そして、少し離れた場所から来た人間が、

「へぇ~」

と言ったところで、初めてその土地の人間が振り返る。

「……これ、そんなに珍しいの?」

案外、地方の文化というものは、その程度のところから始まっているのかもしれない。


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