映画『グランツーリスモ』を流し見しながら、あることを考えた。
ゲームの中で何千周も走り続けた経験が、現実のサーキットで通用する。
一見すると映画ならではの演出に思える。しかし、その背景には「人間の脳は、繰り返しの経験や鮮明なイメージを現実の技能へと結び付ける」という事実がある。
この発想に触れたとき、私はある漫画の場面を思い出した。
『刃牙』で主人公が頭の中に巨大なカマキリを思い描き、命懸けの戦いを繰り広げる場面である。
当時は「漫画だからこその発想」と感じていた。
しかし今、AIやVR(仮想現実)の進歩を見ていると、あの奇想天外な訓練が、少しずつ現実へ近づいているようにも思える。
脳は「想像」と「経験」を結び付ける
戦闘機のパイロットは、実機に乗っていない時間でも、頭の中でコックピットを再現し、離陸から着陸、緊急時の操作まで何度もイメージトレーニングを行うという。
トップアスリートも試合前に成功する動作を何度も思い描く。
人間の脳は、鮮明なイメージを繰り返すことで、実際の経験を補うように学習する力を持っている。
『グランツーリスモ』の主人公がゲームで身に付けた感覚も、その延長線上にあるのかもしれない。
AIは「最強の練習相手」になるのか
もしAIがさらに進化すればどうなるだろう。
武道なら、自分の癖を分析し、理想的な動きを教えてくれる。
楽器なら、わずかな指のズレまで指摘してくれる。
レースなら、自分専用のライバルとして、何度でも勝負してくれる。
AIは疲れない。
何千回でも同じ練習に付き合ってくれる。
まるで『刃牙』の巨大カマキリのように、自分だけの仮想の強敵を作り出せる時代が来るかもしれない。
漫画は未来を先取りしていた
昔は「漫画だから」で片付けられていた発想が、技術の進歩によって現実味を帯びることは少なくない。
空飛ぶ車、腕時計型通信機、人工知能。
かつて空想だったものが、今では現実になりつつある。
そう考えると、『刃牙』のイメージトレーニングも、決して笑い話ではなくなるのかもしれない。
人間は昔から「頭の中で強くなる方法」を考えてきた。
AIは、その想像力を現実へ近づける、新しい道具になるのだろう。
そして数十年後には、「昔は先生が一人で教えていたんだよ」と話す時代が来るのかもしれない。
漫画は、ときどき未来を先に描いてしまう。
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人間は、頭の中に描いた想像を現実へ変えてきた。
かつては空想だった技術も、科学の進歩によって少しずつ形になっている。
しかし、AIが新しいものを生み出す時代になったとき、私たちは改めて考えることになる。
「創造する」とは、単に新しいものを作ることなのか。 それとも、人間だけが持つ経験や感情から生まれるものなのか。
次の記事では、AIと人間の創造性を描いた映画『クリエイター』を通して、その境界線について考えてみたい。



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