食の記憶

人の記憶

人はなぜ他人の人生に興味を持つのか

夜更けの町中華で餃子をつまみながらビールを飲んでいると、時折、奥のテーブル席から話し声が聞こえてくることがある。聞こうとしているわけではない。それでも不思議なもので、話の断片が耳に入ると、つい意識が向いてしまう。「それで結局、会社辞めたんだ...
人の記憶

私は食べたことがない ― 消えゆく郷土菓子『つみかん』の話

『画像のつみかんはイメージ作製したものです』愛媛県松山市には、「つみかん」という郷土菓子があった。「あった」と過去形で書くのは、私自身が一度も食べたことがないからである。地元で生まれ育ったにもかかわらず、その存在を知った頃には、すでにほとん...
人の記憶

サンイートと、パンと、若い頃の空腹

サンイートのパンを知ったのは、美術学校に通っていた知人の生徒さんがきっかけだった。地元では昔から親しまれているパン屋で、コロッケパンやカツパンなど、惣菜を使ったボリュームのあるパンが並んでいる。洒落た店ではない。だが、学生や若い人たちの財布...
人の記憶

「ねるねるねるね」考察

― 「練る」という文化を遊ぶ駄菓子 ―私が「ねるねるねるね」と再会したのは、姪がまだ幼かった頃のことでした。久しぶりに口にしたその味は、子どもの頃の記憶とは少し違います。酸味の強いラムネの風味は、正直に言えば飲み過ぎた午後の胃酸を思わせるよ...
人の記憶

しまなみ海道は橋を渡る旅ではない ― 島の風土と焙烙焼きが教えてくれるもの

瀬戸内海に浮かぶ島々を橋で結ぶ「しまなみ海道」。多くの人は、美しい景色や日本屈指のサイクリングロードを思い浮かべるでしょう。しかし、この道の本当の魅力は、海の上を走ることだけではありません。橋が架かる以前、それぞれの島は船でしか行き来できな...
人の記憶

魅+夜話 第15話 結び ― 記憶は、店ではなく人に残る

今思えば、私はあの店の味を覚えていたわけではないのかもしれない。覚えていたのは、ラーメンでもスパゲティでもなかった。そこにいた人たちの気配だった。熊さんの声。白いシャツに短髪の姿。忙しそうに店内を歩き回る足取り。そして厨房の奥で、ふと現れる...
人の記憶

魅+夜話 第14話 熊さんの話

🐻 熊さんと、渡せなかった黒いボータイ面白いのは、その人を思い出すとき、料理の味ではなく別のものが先に浮かぶことだった。スパゲティの味ではない。体格。短い髪。よく通る声。そして、白いシャツ姿。料理よりも先に、その人の“輪郭”のようなものが記...
人の記憶

酒とジビエとロートレックを少々

酒の肴には癖のある料理が用いられることがあります。お酒を飲む際にはなるべくお酒の比率を多く取りたいのが私の願望ですが、少しは何か口に入れるものは、と考えることが多くなりました。酒と肴には、酒飲みそれぞれにこだわりがあります。私がよくイメージ...
人の記憶

ツバメの鳴き声と雑魚の南蛮漬け

初夏の兆しが見え始める頃になると、公園や神社の様子が少し変わってくる。ツバメやカラスたちが繁殖の季節を迎え、木々の間を忙しく飛び回るようになるからだ。やたらと賑やかな鳴き声が聞こえ、何度も巣と餌場を往復している姿を見ると、「今年もそんな季節...
人の記憶

おもぶりと同じ釜の飯 ― 人が集まるためのご馳走

愛媛県松山地方には、「おもぶり」と呼ばれる郷土料理があります。炊きたての白飯に塩を振り、後から味付けした野菜や山菜を混ぜ込む素朴な料理です。現代の感覚では特別豪華な料理には見えないかもしれません。しかし、この料理が作られていた時代の人々にと...