「『まんが日本昔話』を流し見していたら、落語みたいな裁判に出会った」

文化の記憶

週末、キッズステーションで『まんが日本昔話』の特番を流し見していた。

一話は15分ほど。

それを何本もまとめて、2時間ほどの枠で放送している。

こういう番組は、作業の合間に聴くにはちょうどいい。

知っている昔話なら、そのままBGM代わりに聞いていればいい。
知らない話が始まれば、手を止めて画面を見る。

昔の記憶を再確認する意味でも、この「流し見」という距離感が私にはちょうどいいのである。

そんな中で、今回初めて知ったのが「ハチとアリ」という話だった。

とある村に、遊び好きのハチと、地道に働くアリがいる。

この二人が気分転換を兼ねて海へ出かける。

そこでハチはニシンを獲り、アリはタイを見つけた。

ところが、ここから話がおかしくなる。

二人は魚のことで争い始め、公平な裁きを受けるため奉行所へ向かう。

そこにいるお奉行様が、なんとネズミである。

この時点で、現代の裁判とはかなり違う。

ネズミ奉行はまずハチに尋ねる。

「お主、掛け算の二の段を言ってみよ」

ハチは、

「二一が二、二二が四、二三が六……」

と答えていく。

そして奉行が、

「二かける四はいくつじゃ?」

と聞く。

ハチは答える。

「八です」

すると奉行。

「そうそう……二×四、ニシンがハチじゃ!」

……。

私は思わず、

「ダジャレじゃねーか。落語かよ……」

と突っ込んでしまった。

ところが、まだ終わらない。

今度はアリに向かって、

「お主、人から感謝されることをしてもらったら何と言う?」

と尋ねる。

アリは、

「ありがたい」

と答える。

すると奉行、

「アリがタイじゃ!」

……。

もう完全に駄洒落裁判である。

ニシンはハチ。

タイはアリ。

これにて魚の行き先が決まり、

「一件落着」

となった。

いや、どういう裁判なのだ。

証拠はどこへ行った。

証人は誰なのだ。

そもそも魚の所有権について争っていたはずなのに、最終的には掛け算と語呂合わせで判決が下っている。

しかし昔話というのは、こういうところが面白い。

現代の感覚で考えれば「そんな裁判あるか」となるのだが、昔話の世界では動物が普通に人間のように暮らし、ネズミが奉行を務め、最後にはダジャレで事件まで解決してしまう。

そして何より面白いのが、その後である。

ハチとアリは、結局タイとニシンを分け合って食べたという。

めでたし、めでたし。

……私も話を聞いているうちに、なんだか魚を食べたような気分になってしまった。

お腹いっぱいである。

こういう話が突然出てくるから、『まんが日本昔話』の流し見はやめられない。

有名な「桃太郎」や「浦島太郎」だけなら、こちらも内容を知っている。

ところが、長いこと生きてきても知らなかった昔話が、作業中のテレビから突然流れてくる。

しかも、それがまさかのダジャレ裁判だったりする。

集中して見るほどでもない。

かといって完全に無視するには惜しい。

この絶妙な距離感が、昔のテレビ番組を流し見する面白さなのだと思う。

作業をしながら昔話を聴いていると、たまに画面の向こうから、

「ニシンがハチじゃ!」

などという、とんでもない一言が飛んでくる。

その瞬間だけ手を止める。

そして、

「……今の何だったんだ?」

と思いながら、また作業に戻る。

週末の『まんが日本昔話』。

今回も、なかなか腹持ちのいい一話であった。


次の記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました