なまはげは大晦日に何回仕事をするのか

文化の記憶

さとのか4Kで「祭JAPAN 奇祭 なまはげ柴灯まつり」を流し見している。

秋田県男鹿市に伝わる「なまはげ」と、神社の神事を組み合わせた祭りを紹介する番組である。

なまはげといえば、大晦日の夜に大きな鬼の面をつけた男たちが村の家々を訪ね、

「悪い子はいねがー」

と子供たちを叱る姿を思い浮かべる。

子供にとっては恐怖の家庭訪問である。

ところが大人の側から眺めてみると、これはなかなか忙しい。

夜更けになってから村の家々を回り、子供たちに説教する。

しかも、その場で酒を振る舞われる。

普通なら、

「では、よいお年を」

と帰って布団に入ってもよさそうなものだが、なまはげにはまだ仕事が残っている。

神社の境内に移動すると、今度は観光客を相手に太鼓や踊りを披露する。

さっきまで一般家庭を訪問していた鬼が、今度は舞台の上で芸を見せている。

さらにたいまつを手にして山へ帰っていく。

ここまで来ると、なまはげというより、年末限定の超多忙なイベントスタッフである。

家庭訪問。

酒席。

舞台公演。

たいまつを持った山登り。

そして最後は観光客との記念撮影会。

一晩の中に、これだけの業務が詰め込まれている。

私なら途中で、

「すみません。今日はもう帰らせてもらいます」

と言いたくなる。

しかも私はテレビを見ながら酒を飲んでいる。

こちらは酔いが回って、年を越せるかどうかすら怪しい時間帯である。

その一方で、画面の向こうでは、同じ時間帯に大きな鬼の面をかぶった人たちが太鼓を叩き、踊り、たいまつを持って山へ向かっている。

こちらが缶やグラスを片手に、

「もう眠い……」

などと言っている間に、なまはげはまだ働いている。

そう考えると、急に親近感が湧いてくる。

恐ろしい鬼の姿をしているが、中身は地元の祭りを支える普通の人間なのである。

そして、この祭りが面白いのは、単なる観光向けのパフォーマンスではなく、地域の人々が長く受け継いできた行事の中に、現代の観光が入り込んでいるところだと思う。

子供を叱りに家を訪ねる昔からの風景と、観光客に向けて太鼓を叩き、最後に一緒に写真を撮る現在の風景。

鬼が山から下りてきて、また山へ帰っていく。

その間に、人間たちは酒を飲み、太鼓を叩き、写真を撮る。

そして翌日になれば、なまはげの面を外して普通の正月を迎える。

こうして考えると、祭りというものは不思議なものである。

神事なのか、地域行事なのか、観光イベントなのか。

たぶん、その全部なのだろう。

昔から続いてきたものに、現代の人間が少しずつ仕事を足していった結果、なまはげの一晩がとんでもなく忙しくなってしまった。

私には、そんなふうにも見えてしまう。

それでも山へ帰っていくなまはげの姿を見ると、妙に格好いい。

こちらはテレビの前で酔いつぶれかけているというのに、向こうはたいまつを持って山へ帰っていく。

「鬼のほうが元気じゃないか……」

そんなことを思いながら、私はまた酒を一口飲む。

たぶん、これが私の大晦日の過ごし方である。


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