映画を観ていたはずなのに、いつの間にか俳優探し
ザ・シネマでレオナルド・ディカプリオ特集を流し見していた。
放送されていたのは『ワールド・オブ・ライズ』。
ディカプリオ演じる主人公が情報機関の任務に就く作品なのだが、私の目に留まったのは、彼を取り巻くスーツ姿の人物だった。
どこかで見た顔である。
頭髪が薄く、知的で、いかにも情報機関の人間が似合いそうな風貌。
英国紳士のスパイ映画『キングスマン』に登場するマーリンではないか。
調べてみると、やはり同じマーク・ストロングだった。
ところが、私の記憶の引き出しには、もう一人似たような顔が入っていた。
海外ドラマ『ER緊急救命室』のマーク・グリーン先生である。
こちらはアンソニー・エドワーズという俳優さんだった。
さらに、ハリウッド版『シャル・ウィ・ダンス?』で竹中直人さんが演じた役に相当するリンク・ピーターソン役のスタンリー・トゥッチまで思い浮かんできた。
どうやら私の頭の中では、この三人が同じ系統の顔として分類されているらしい。
ハリウッド版・団子三兄弟
マーク・ストロング、スタンリー・トゥッチ、アンソニー・エドワーズ。
並べてみると、なかなか味わい深い三人である。
もちろん、よく見れば顔立ちも表情も違う。それぞれ個性のある俳優さんなのだが、私にはどうにも見分けがつきにくい。
顔の輪郭や頭髪、目元の雰囲気など、何となく同じ棚に収まってしまうのである。
名付けて「ハリウッド版・団子三兄弟」。
長男は情報機関の責任者。
次男は英国諜報機関の技術担当。
三男は救急病棟の医師。
なかなか個性的な家系である。
切断された指の後始末
ここで『ワールド・オブ・ライズ』の場面を思い出す。
マーク・ストロング演じるハニ・サラームは、ディカプリオ演じるフェリスに対して、なかなか手荒な対応をする。
指を切断されるという、こちらまで顔をしかめたくなる場面だ。
しかし、団子三兄弟の設定で考えるなら、その後の処理はグリーン先生の仕事になる。
情報機関で指を切断され、救急病棟に運ばれてくる患者。
担当医は、かつての親戚である。
「いったい何があったんですか?」
「国際情勢です」
そんな申し送りがあったら、グリーン先生もカルテの記入に困るだろう。
切断された指が無事に運ばれてきたのかどうかも分からない。
そもそも、指を切断した張本人と治療する医師が、私の頭の中では同じ親戚筋なのだから、なかなかややこしい。
顔の記憶という曖昧なもの
人間の顔を覚えるというのは、意外と難しい。
特徴的な顔なら覚えやすいが、似たような雰囲気を持つ人物が複数いると、記憶の中で混ざってしまう。
私の場合、映画を最初から最後まで集中して鑑賞するというより、CATVを流し見していることが多い。
物語を追っているつもりが、いつの間にか出演者の顔を見比べている。
そして本来の映画から脱線し、別の作品の記憶まで引っ張り出してくる。
映画鑑賞なのか、脳内の人物照合作業なのか、よく分からなくなってくる。
まあ、映画の楽しみ方など人それぞれである。
誰が主演で、どんな賞を受賞したかという話ばかりが映画の楽しみではない。
似た顔の俳優を三人集めて団子三兄弟と呼び、切断された指の後始末を救急医に任せてみる。
そんな無駄な連想にも、映画を観る楽しみはある。
本編を観ていたはずなのに、最後は救急病棟の申し送り事項まで考えてしまった。
どうやら私の映画鑑賞には、少々余計な部署が設けられているようだ。
映画の中では別々の人生を歩んでいる三人も、私の頭の中では、いつの間にか一本の串に刺さってしまった。
さて、次にこの団子三兄弟の誰かを見かけたら、私はまた別の親戚を探し始めるのだろう。


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