魅+夜話(みたすやわ)第4話 赤いネオンに引き寄せられた理由

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豚太郎の話を書いていると、どうしても思い出すものがある。

それはラーメンよりも先に目に入っていた、あの赤いネオンである。

夜道を走っていると、遠くからぼんやりと浮かび上がる赤い菱形。

文字がゆっくりと消え、また浮かび上がる。

派手な演出ではない。

それなのに、なぜか視線だけは吸い寄せられてしまう。

子どもの頃の私は、その理由を考えたこともなかった。

ただ、「豚太郎がある」と思えば、それだけで少し嬉しかったのである。


最近、アニマルプラネットでアフリカの蟻塚を紹介する番組を見た。

夜になると、巨大な蟻塚が淡い緑色に光り始める。

最初は蟻が光っているのかと思ったが、そうではなかった。

蟻塚の表面には発光する幼虫が潜み、その光でカゲロウの仲間などを誘い寄せて捕らえるのだという。

幻想的でありながら、巧妙な自然の仕組みだった。

その映像を見ながら、私はふと豚太郎のネオンを思い出した。

もちろん、ラーメン屋が獲物を捕まえるために光っていたわけではない。

それでも、子どもの私にとっては、あの赤いネオンには理屈では説明できない引力があった。

夜道の向こうに見える赤い灯り。

「あそこに行ってみたい。」

そんな気持ちが、いつの間にか足を向けさせていたのである。


今になって思えば、人は光そのものに惹かれるのではないのかもしれない。

その光の向こうにある風景に惹かれているのだ。

店の暖簾。

湯気の立つ厨房。

店員の声。

家族との食事。

そうした記憶が、赤いネオンと一緒に心へ残っている。

だから今でも、赤い灯りを見ると、豚太郎を思い出す。


あの蟻塚に集まる虫たちは、生きるために光へ向かう。

一方で、幼かった私は、町中華のネオンに向かって歩いていた。

少し大げさかもしれないが、あの頃の私は一匹のカゲロウのようなものだったのかもしれない。

光に誘われ、その先でラーメンを食べ、人と出会い、また家へ帰る。

振り返ってみると、私が惹かれていたのはネオンではない。

あの赤い灯りの向こうに広がる、町の風景そのものだったのである。


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