魅+夜話 第11話 🐷 ネオンの罠と、勘違いした一杯

その他の雑記

山あいの町を離れ、中予で暮らし始めて数年が過ぎた頃のことです。

仕事帰りの夜道を走っていると、見慣れた赤いネオンが目に飛び込んできました。

「ラーメン」

その文字を見た瞬間、体が勝手に反応しました。

「えっ、こんな所にも豚太郎があったのか。」

そう思って車をUターンさせ、そのまま店へ入りました。

空腹も手伝い、何の疑いもありませんでした。


🍜 いつもの注文、でも何か違う

私は塩ラーメンと餃子。

相方は焼き飯と餃子。

いつもの組み合わせです。

ところが、一口食べた瞬間から、どこか違和感がありました。

麺は少し柔らかく、私が慣れ親しんだ食感とは違う。

餃子も焼き飯も、決してまずいわけではありません。

ただ、頭の中にある「あの味」と一致しないのです。

それでも二人とも黙って食べ続けました。


🤔 違和感の正体

店を出て、改めて赤いネオンを見上げると、そこには大きく書かれていました。

「豚次郎」

「あっ……豚太郎じゃなかったのか。」

ようやく、すべてがつながりました。

違っていたのは味ではありません。

最初から、私の思い込みだったのです。


🌙 人は味より先に、記憶を食べている

あの夜、私が求めていたのは、一杯のラーメンではありませんでした。

赤いネオンを見た瞬間、頭の中ではもう「豚太郎」が始まっていたのです。

だから、どんなラーメンが出てきても、記憶の中の味と比べてしまう。

考えてみれば、ずいぶん勝手な話です。


✍️ あとがき

あの夜は、ネオンに騙されたというより、自分の記憶に騙された夜だったのかもしれません。

人は案外、舌で味わう前に、目で味わい、記憶で食べています。

だから今でも、赤いネオンを見ると、少しだけあの夜のことを思い出します。

「また勘違いするなよ。」

そんなふうに、自分で自分に笑いかけながら。


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