魅+夜話 第2話 ミタスは合法麻薬だったのか

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子どもの頃、私はラーメンの味など分かっていなかった。

醤油だ、味噌だ、とんこつだと言われても違いはよく分からない。

それでも豚太郎のラーメンだけは好きだった。

理由は説明できない。

ただ、美味しかったのである。


「ミタス」という名前を知ったのは、ずっと後になってからだった。

知人が豚太郎でアルバイトをしていて、

「あの味にはミタスを使っているんですよ。」

と何気なく教えてくれた。

その時初めて、あのラーメンを支えていた調味料の名前を知った。

子どもの頃には、そんなことを考えたこともなかった。


さらに不思議なのは、その何年か後である。

私は夜勤の物流の仕事をするようになった。

毎晩、さまざまな食品や調味料の段ボール箱が流れてくる。

もちろん、うま味調味料も例外ではない。

「ミタス」だけではない。

メーカーの違う商品が流れてくる日もある。

素人の私には詳しいことは分からないが、成分も大きくは変わらないのだろうと思う。

それでも、箱に「ミタス」と書かれているのを見ると、不思議と気持ちが動く。


「今日も豚太郎は頑張っているんだな。」

そう思ってしまうのである。

店を見たわけではない。

ラーメンを食べたわけでもない。

ただ、物流センターを流れていく一つの段ボール箱を見ただけである。

それなのに、頭の中には赤いネオンが浮かび、湯気の立つ厨房が思い出される。


考えてみれば、人は味だけを覚えているわけではない。

店の明かり。

店員の声。

友人との会話。

子どもの頃の家族との食事。

そうした記憶が積み重なって、一杯のラーメンになる。

だから私が懐かしんでいるのは、「ミタス」という調味料ではないのかもしれない。

その調味料が運ばれ、誰かがラーメンを作り、誰かが食べていた、そんな町の風景そのものなのだろう。


今でも夜勤中に「ミタス」の箱が流れてくることがある。

私はその箱を見ながら、心の中でそっとつぶやく。

「今日も頑張ってるな。」

誰に向けた言葉なのか、自分でもよく分からない。

豚太郎なのか。

働いている人たちなのか。

それとも、あの頃の自分自身なのか。


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