『運び屋』の老人が残した問い③

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家族サービスより貯蓄を選ぶ時代

少し考えさせられる話を聞いた。

職場の同僚は、子供達との繋がりを大切にしている。

休日には家族と出掛け、時には仕事を切り上げて家族との時間を優先する。

親としては自然な考え方なのだろう。

ところが息子達の反応は意外なものだった。

「そこまでしなくていい。」

「働けるうちに働いておいてくれ。」

「将来必要になるかもしれない貯蓄を優先してほしい。」

そんな言葉が返ってきたという。


私はその話を聞いて少し驚いた。

しかし同時に、息子達の考えも理解できる気がした。

今の若い世代は不安の多い時代を生きている。

物価上昇。

年金問題。

介護問題。

将来の生活費。

彼らにとっては、家族サービスよりも老後への備えの方が現実的な課題として映っているのかもしれない。


もちろん親の気持ちも分かる。

子供が成長する時間は限られている。

一緒に出掛けられる期間も永遠ではない。

親としては少しでも思い出を作りたいと思うだろう。


だが現実には、時間もお金も無限ではない。

仕事を優先すれば家族との時間は減る。

家族との時間を優先すれば収入や将来への備えは減る。

どちらも手に入れようとしても、どこかで限界が訪れる。


私は映画『運び屋』の主人公アールを思い出した。

彼は人生を楽しむことを知っている男だった。

人と語り合い、寄り道をし、自由に生きる。

しかしその結果として失ったものも少なくなかった。

映画の中で若者から、

「だから今こんなことをしているんだろう。」

と返される場面がある。

あの言葉には妙な説得力があった。


一方で、将来への備えだけを優先した人生にも別の問題がある。

老後資金は残るかもしれない。

しかし失った時間は戻らない。

子供達と過ごせる時間も二度とは訪れない。


結局のところ、どちらが正しいのか私には分からない。

絆を優先する人生。

備えを優先する人生。

どちらにも得るものと失うものがある。


ただ一つ言えるのは、昔よりも不安が身近な時代になったということだ。

かつては地域社会や親族が支えてくれた。

近所の人が気に掛けてくれた。

しかし今は、それぞれの家庭が自分達で未来に備えなければならない場面が増えている。

だから若い世代ほど現実的になるのかもしれない。


『運び屋』から始まった私の考察は、結局ここへ辿り着いた。

昔の共同体は弱くなった。

その代わりを技術が補おうとしている。

そして最後に残るのは家族という最も小さな共同体である。

しかし、その家族ですら何を優先するべきか迷う時代になった。

人情を選ぶのか。

備えを選ぶのか。

あるいは、その間にある答えを探すのか。

その問いに正解はない。

だからこそ私達は、それぞれの人生の中で答えを探し続けるのだと思う。


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