観察記

観察記

夜更けの残り香

夜中の3時過ぎ、トイレに立ったついでに階段へ目をやると、月丸が上段に座っていた。あれほどまでに騒がしかった気配は、すでにどこにもない。家の中は、拍子抜けするほど静まり返っている。ほんの2〜3時間前までは、あの一帯が運動場だったはずだ。足音と...
観察記

「普通の顔」が一番怖い理由

イコライザーの主人公のような人物が、もし同じ職場にいたとしたら――。多くの人は「頼りになる人」と評価するかもしれない。無駄口を叩かず、仕事は正確で、感情の起伏も少ない。だが私は、ああいう人間には近づかない。理由は単純で、理解できないからだ。...
観察記

漫画『出禁のモグラ』の疫病神から学ぶ、家族や身近な人間関係の救い方

漫画や物語に登場する「疫病神」という存在は、災いをもたらす怖いキャラクターとして描かれることが多いです。でも、少し視点を変えると、私たちの身近な人間関係の問題を考えるヒントを与えてくれる存在でもあります。胡散臭く見えたけれど、実は寄り添う存...
観察記

映える猫と、山の静寂

― 可愛いと責任のあいだで ―指先で画面をなぞれば、猫がいる。丸い瞳、やわらかな毛並み、少し不機嫌そうな顔。SNSが広がったいま、猫はかつてないほど身近になった。映える一枚は、ほんの数秒で遠くまで届く。けれど、その数秒の向こうにある時間は、...
観察記

春画とは何か?江戸時代のSNSだったのか―艶と笑い、そして人間の変わらなさ

先日、春画を扱った映画を観る機会があった。春画先生のように、知識人たちが静かな空間で春画を鑑賞する場面がある。そこで感じたのは、奇妙な違和感だった。布で口元を押さえながら、どこか神妙な顔で絵を見つめている。しかし、描かれているものはどう見て...
観察記

破滅は呆気ない。生き延びるほうが難しい。

——映画『ヒート』を流し見しながら考えたこと夜、映画『ヒート』を流し見していた。デ・ニーロ演じる昔堅気の銀行強盗と、アル・パチーノ演じる執念深い刑事の攻防。仕事は一流だが、私生活は崩壊している男たち。よくある構図と言えば、そうかもしれない。...
観察記

雪道と白足袋

今日は父が仕事休みのため、下の階が占領されている。テレビは最大音量。掃除機は遠慮なく振り回される。猫にとっては、なかなか厄介な存在である。素面でも、どこか酔客のように絡まれるのだから、なおさらだ。猫たちは早々に静かな場所を察知し、二階へ避難...
観察記

胸に座る記憶

昔、霊体験を扱った本を読んだことがある。そこには、背筋が凍るような怪異よりも、ただ“残っているもの”の話が多かった。家には記憶が染みるという。柱の擦れ、畳の沈み、建具の重さ。誰かがそこにいた時間が、形を変えて残る。古い家を改装した宿では、夜...
観察記

九尾とお稲荷の二面性

春の陽気が少しずつ町を満たす頃、今年も五穀豊穣を願ってお稲荷さんに手を合わせた。良い米が実りますように――そんな思いを胸に、私は九尾とともにこたつで過ごす。春の祭りは、狐を豊穣の象徴として掲げる。境内では熊手が振られ、人々は福を求めて列を作...
観察記

歩く塔に猫は集う

1階の同居人は猫用のタワーをよく作る。だが実際に猫に飛び乗られているのは、そのタワーではない。本人である。普段、彼はいつでも半纏を着込んで歩いている。その厚みと摩擦がちょうど良いのだろう。猫たちは布を伝い、遠慮なく這い上がる。いわば、歩く塔...