食と記憶

食と記憶

匂いで呼び起こされること。

昼時になると、下の階から甘く柔らかな味噌の香りが漂ってくる。匂いだけで、白味噌のまろやかな甘みや舌触りまでがふと呼び起こされる。愛媛の白味噌は、甘めで優しい味わいが心に残るのだろう。農家の昼食は手軽さと腹持ちが重視される。大きめのおにぎりに...
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食のくじ運

先週、同居人と町中華系ファミレスでランチを食べた。そこには「わがままランチ」という、メインのおかずを二品選べる少し得した気分になれるメニューがある。ところが今回は少し事情が違った。同居人が「追加料金で付けられるあんかけラーメンだけで十分だか...
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小さじ一杯の隠し味

寝起き間際、どうしても温かい飲み物が欲しくなり、乳酸菌のお湯割りを作ってみた。軽く口に含むと、なぜか物足りない。しばらく考えた末、ラム酒を小さじ一杯注ぎ、湯割りに混ぜてみる。やはり風味が立ち、少し大人びた飲み物になった。こうした隠し味は、日...
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魅惑のカラメルソース

お屠蘇や御神酒など、お酒は場面によって呼び名が変わる。ただの酒なのに、名前が変わるだけで意味合いまで変わってしまうのは、少し不思議な気持ちになる。食事の後、同居人が大きめのグラスに、盛り上がったプリンを運んできた。食後直後だから入らないと告...
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匂いに選ばれる夜

――都市の境界を読む「今夜は仕事疲れがあると思うから、もしかしたら豚太郎かも……」同居人が下の階から上がって来て、そんなことを言いました。それを聞いた私は、「うーん……」と、しばし考え込みます。寒気はそれており、日中はそれなりに温かい。しか...
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焼きそばメモリー

――都市の境界を読む最近の焼きそばというのは進化しているなあ……などと、時代錯誤な郷愁に浸ることがあります。普段は料理などほとんどしない私ですが、なぜか焼きそばだけは自分で作ることがあります。手順は簡単です。カット野菜をフライパンに敷き詰め...
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湯割りの夜

昨夜から寒気が流れているようだ。夜勤明けでも肌寒く、帰宅の途につくまでジャンパーの中のナイロン素材のベストを脱ぐことはなかった。家に着くと早めに湯を身体に流し、早々に浴室を出る。ここでも家着はヤッケだ。軽くて温かく、寝間着として使っている。...
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冬瓜のスープ

冬瓜の話である。この時期になると、なぜか毎年のように思い出してしまう。初めて口にしたのは、もう数十年前のことだった。当時、よく一人で出向いていた喫茶店があった。近場とは言い難い、少し距離のある場所にある店だったが、妙に居心地がよく、気が向く...
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イカと数の子和え

前回のタコに続いて、今夜はイカです。このアテは王道に近いと思っていますが、見切り品らしく、正月明けから取り残された感じが漂う味でもあります。今夜は仕事疲れで、ストーブの前でうたた寝している同居人の隣で、静かに酒を傾けます。王道には王道らしく...
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タコワサマヨネーズ和え

今宵のアテは、やや変化球じみたものから酒を始めた。一口含むと、美味しいとも不味いとも言い切れない、曖昧な存在感だけが口に残る。こういう奇妙な味に何の酒が合うのかは、正直よく分からない。ただ、ダラダラ酒を飲む言い訳としては、十分すぎる素材だ。...