チャボ計画が始まってからというもの、私も気が付けばニワトリに関する動画を見る機会が増えました。
その中で、ある個人オーナーがこんな話をしていました。
「孵化しても、無事に成長するのは三割くらいですよ。」
自然界では、それだけ厳しい世界なのだそうです。
命は生まれるだけでは終わりません。
そこから食べ、眠り、病気や外敵を乗り越え、ようやく一羽のニワトリとして成長していきます。
その話を聞いた私は、「なるほど」と妙に納得しました。
一方で、わが家のチャボ計画を思い返すと、どうにも普通の話として受け止められない自分がいます。
何しろ今回の卵は、
「そんなもの、やってみなければ分からないだろう!」
という同居人の一言から始まった卵です。
反対していた親父は、いつの間にか卵の反転係になり、私までその任務を任されました。
ヒヨコの餌も用意され、名前の候補まで決まり始めています。
ダージリン。
アッサム。
ニルギリ。
さらには、
「酒の銘柄でもいいんじゃない?」
と、夜中になって新たな命名案まで飛び出しました。
テキーラ。
ウイスキー。
焼酎や日本酒まで候補に挙がりそうな勢いです。
その話を聞いているうちに、私の頭の中では優雅なお茶のイメージはすっかり消え去りました。
代わりに浮かんできたのは、メキシコのプロレスラー、チャボ・ゲレロです。
そういえば、「チャボ」という名前だけなら、こちらの方がよほど力強い。
もし羽ばたく勢いまで兼ね備えていたなら、リングロープを飛び越えるようなチャボになってしまうかもしれません。
もっとも、最近になってチャボたちの転居先も決まりそうです。
姪夫婦が移り住む予定の土地は、昔ながらの農家の跡地で、およそ百五十坪ほどの広い敷地があるそうです。
そこなら自由に歩き回ることもでき、住宅街で毎朝「コケコッコー!」と近所を起こしてしまう心配もありません。
チャボにとっても、人にとっても、その方がずっと幸せなのでしょう。
私は勝手に、その場所を「新しいスタジオ」と呼ぶことにしました。
広い舞台が用意されたのです。
あとは主役の登場を待つばかりです。
動画では「三割しか育たない」と語られていました。
確かに、それが現実なのでしょう。
それでも私は、どこかで期待しています。
今回温められている卵は、ただの卵ではありません。
「やってみなければ分からない。」
その言葉を何度も繰り返しながら温められてきた卵です。
親父も、私も巻き込み、家族総出で見守られている卵です。
そんな環境で生まれてくるヒヨコが、おとなしい性格であるとは思えません。
殻を破った瞬間から、
「そんなもの、やってみなければ分からないだろう!」
と言わんばかりの勢いで飛び出してきても、不思議ではない気がします。
最近では、私の想像も少しずつ大げさになってきました。
もしあのヒヨコたちが、映画『RRR』の主人公たちのような並外れた精神力を持って生まれてきたらどうなるのだろう。
困難など意にも介さず、どこまでも突き進む。
そんな生命力を秘めた小さな主役たちが、一斉に庭を駆け回る姿を思い浮かべると、思わず笑ってしまいます。
もちろん、現実は映画のようにはいきません。
だからこそ、その一羽一羽が無事に育ってくれることを願っています。
そして、いつの日か百五十坪の広い舞台を元気に歩き回るダージリンやアッサム、あるいはテキーラたちの姿を見ることができたなら、そのとき私は、きっとこう書くのでしょう。
「この物語は、あの日の『やってみなければ分からない』という一言から始まった。」
チャボ計画は、まだ終わっていません。
物語はいま、小さな殻の中で静かに続いています。
次の記事
「やってみなければ分からない。」
その言葉だけを頼りに始まったチャボ計画は、気が付けば家族みんなを巻き込み、小さな物語へと育ってきました。
あとは、殻の中で静かに眠る主役たちが目を覚ます日を待つばかりです。
果たして生まれてくるのは、おとなしいチャボなのか。
それとも、私の予想どおり『RRR』級の生命力を秘めた小さな主役たちなのか。
次回はいよいよ、チャボ計画最大の見どころ――「孵化の瞬間」をお届けできればと思います。


コメント