魅+夜話 第7.5話 思い出の味は、人を見る目まで変えてしまう

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青春時代の出来事は、不思議なほど食べ物や店の記憶と結び付きます。

私にとって豚太郎は、ラーメンの味よりも、家に居場所がないと感じながら夜の町を歩き続けた日々を思い出す場所です。

何年か後、実家近くの交差点で飲酒検問が行われていました。

パトカーに誘導される一台の車。その運転席にいたのは、あの男性でした。

私は何も言わず、その横を通り過ぎました。

「ざまあみろ」という気持ちは、不思議とありませんでした。

だからといって、好きになれたわけでもありません。

母が亡くなった今でも、彼の母親と言葉を交わすことはあります。それと彼自身への感情は、まったく別の話です。

あの出来事以来、私は、人に迷惑をかけても悪びれない人や、自分の都合ばかりを優先する人に敏感になりました。

態度なのか、話し方なのか、それとも空気なのか。

言葉では説明できない「匂い」のようなものを感じると、自然と距離を置くようになっています。

会社でも、ときどき似た雰囲気を持つ人に出会います。

もちろん、第一印象だけで人を決めつけるつもりはありません。

それでも、高校時代のあの数週間が、私の人を見る目を少しだけ変えてしまったことだけは確かです。

人は店の味だけを覚えているのではありません。

その店で、どんな時間を過ごし、どんな自分だったのか――その記憶ごと心に刻まれているのだと思います。

今でも私は、「豚」に誘われることがあります。

もちろん、それは豚肉の話ではありません。

「豚太郎に行こう」という誘いのことです。

けれど、あの高校時代の数週間を知っている私には、その名前を聞くだけで、夜の町を歩き続けた自分や、居場所を失ったあの頃の空気がよみがえります。

店に罪はありません。

ラーメンにも何の責任もありません。

それでも、人は味だけで店を覚えているわけではないのでしょう。

そこに刻まれた記憶まで、一緒に思い出してしまうものです。

だから私は今でも、「豚」にそれほど積極的に行こうとは思えないのです。

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