日曜の夜は、だいたい平和である。
風呂から上がり、二階へ上がると、
コタツの掛布団から頭だけ出したコリンが
鬼平犯科帳 を見ながら大あくびをしている。
どう見ても町方同心だ。
「こいつぁ、いけねぇなぁ……」
とでも言いたげな顔で、画面を見つめている。
だが実際に“いけねぇ”のは、だいたい下の階にいる。
徐倫である。
現在、盗賊一味と会合中。
議題はおそらく、
・夜間奇襲の時間割
・カリカリの分配問題
・人間の隙の突き方
などであろう。
しかしこの世界、意外にリアルだ。
盗賊団にも仲間割れはある。
横取り。
早食い。
縄張りの主張。
微妙な距離感。
理想のチームワークなど存在しない。
だからこそ、妙に人間臭い。
昼は盗賊の頭目。
しかし夜になると、徐倫は私の胸元に座る。
優しく丸まり、体温を預ける。
……が、中爪だけはきっちり突き立てたままだ。
動くな、いま除霊中だ。
どうやら私が外で溜め込んだ毒を吸い出しているらしい。
多少の悪さは、その副作用だと思うことにしている。
そして忘れてはならないのが、月丸。
三毛柄の羽織をまとい、
塔の上からすべてを監視している殿様である。
騒がない。
焦らない。
無駄に走らない。
「少々のトラブルは、良きにはからえ」
そんな顔で見下ろしている。
盗賊団が揉めても、
同心がコタツで世を憂いても、
殿は動かない。
それでも不思議と崩壊しない。
わが家には、
正義と盗賊と殿がいる。
そして私は、ただの城。
胸の上で除霊され、
二階で同心があくびをし、
塔の上で三毛の羽織が静かに揺れている。
地方にいても、江戸の町は案外近い。
しかもこちらの方が、少しだけリアルである。
わが家の時代劇 ― 殿と盗賊と除霊師
Uncategorized

コメント