1階の同居人は猫用のタワーをよく作る。
だが実際に猫に飛び乗られているのは、そのタワーではない。本人である。
普段、彼はいつでも半纏を着込んで歩いている。
その厚みと摩擦がちょうど良いのだろう。
猫たちは布を伝い、遠慮なく這い上がる。
いわば、歩く塔だ。
どこかで見た光景だと思えば、映画『天空の城ラピュタ』に登場する庭園ロボットに似ている。
肩に小さな生き物を乗せ、静かに歩くあの姿。
ただしこちらは鳩ではない。重量級の猫である。
特に茶トラ+白地の巨漢「のの」と、
白足袋組の片割れ「運」。通称、白足袋ブラザーズ。
問題は「運」だ。
彼は飛び乗るのがあまり上手ではないらしい。
軽やかに跳ぶのではなく、山肌を制圧する登山隊のように、じわじわと半纏をよじ登る。
そのたびにロボの重心はずれる。
二足歩行とは、思ったより繊細な仕組みらしい。
重心が両足のあいだに収まっているうちはいい。
だが、横から、しかも垂直方向に重量が加わると、話は別だ。
ロボは傾く。
そして、たまに悲鳴とともに地に伏せる。
この光景を見ていると、二足歩行にはやはり限界があるのだと実感する。
第三の脚まではいらないにしても、猫のような尻尾は必要なのではないか――と。
傾きそうになった瞬間、尻尾を逆方向へ振る。
慣性を使って軸を戻す。
そうすれば、半纏ロボは地に伏せずに済むのではないか。
もっとも、塔に尻尾をつければ、
ぶら下がる対象がひとつ増えるだけかもしれない。
それでも思う。
倒れるたびに起き上がるその姿は、
尻尾がないことの証明でもある。
歩く塔に、今日も猫は集う。
そして塔は、少し傾きながらも、また歩き出す。



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