ことのはびと

法と苦楽詩(ほうとくらし)

第12回 再び、いつもの一日へ

判決の日から数日が過ぎた。 朝、いつものようにコーヒーを淹れ、窓を開けると、冷たい風が頬を撫でた。 何も変わっていないようで、どこか違っている。 そんな感覚が、まだ胸の奥に残っている。 あの法廷で見た光景は、今も記憶の奥で静かに息づいている...
法と苦楽詩(ほうとくらし)

第11回 : 判決後の沈黙 ( その2 )

第11回 判決後の沈黙 評議室を後にしたあの日から、奇妙な静けさが心の奥に沈んでいる。 誰に話すこともできないやり取り、沈黙の中でしか共有できなかった空気。 それは今でも、どこか胸の底に石のように残っている。 その夜は、たしか中秋の名月だっ...
法と苦楽詩(ほうとくらし)

第11回 : 判決後の沈黙 ( その1 )

― 補充裁判員席から見た最後の瞬間 ―法廷内は、張りつめた静寂に包まれていた。裁判長の声が響き、判決文が淡々と読み上げられていく。その響きが、天井から壁、そして傍聴席へと吸い込まれていくのを感じた。私は補充裁判員として、特別に設けられた席か...
法と苦楽詩(ほうとくらし)

⚖️ 第10回 判決文を読む裁判長を傍聴席から見る

◆ 裁判員最後の日――判決宣告後の視点で見えたもの裁判員としての任期最終日。法廷での判決宣告を終え、控え室で交わしたやり取りが、法廷の空気と裁判長の眼差しを改めて印象づけました。先日、補充裁判員としての最後の日を迎えました。傍聴席の指定席に...
法と苦楽詩(ほうとくらし)

第9.5回 補充裁判員2から見た自由人的な視点で語る

🇻🇳 異国で働くベトナム人実習生たち──社会主義が残した「依存の影」◆ 導入:法廷で感じた“思想の残響”日本の法廷で、ひとりのベトナム人技能実習生が殺人未遂の罪に問われた。半年という短い滞在期間での犯行。だが、私が評議の場で感じたのは、単な...
法と苦楽詩(ほうとくらし)

第9回 半年で踏み外した道──外国人実習生の現実と、刑務所生活への道 ( 余談篇 )

被告人の人物像と、崩れていった生活の輪郭日本にやって来て、わずか半年足らずでこれほどの凶悪犯罪を起こした被告人。彼は職場での人間関係にも馴染めず、会社から支給された社員寮の使い方さえ十分に理解しないまま、他人に依存する生き方を続けていました...
法と苦楽詩(ほうとくらし)

第8回 法廷と神輿とおーいお茶

~評議と秋祭りが交錯する、自由人の一日~控え室にて、緑茶とともに判決を待つ判決前の控え室は、独特の静けさと緊張感が漂っていました。机の上に置かれた「おーいお茶」が、まるで今日の判決を一緒に見届ける“相棒”のように見えます。午後1時15分から...
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第7回 評議 ― 市民の声と司法の間で

◆ 評議という名の「最後の議論」法廷での論告・弁論・被告人の最終陳述を終えた翌日、我々裁判員は控室にて罪状を決める話し合い、いわゆる評議に入りました。裁判官3名がそれぞれ役割を担い、我々の意見を引き出していく形で進行します。右陪席の判事が進...
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第6回:論告(検察官)・弁論(弁護人)・被告人最終陳述

※評議直前の、静かなクライマックス集合・入廷我々補充裁判員の集合は午後12:50。裁判官3名とともに午後1:10に法廷へ入りました。いつもの所作──礼に始まり礼に終わる──を済ませると、いよいよ後半パートの始まりです。論告(検察官)――簡潔...
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第5.5回 被告人質問(弁護人&検察官)コラム風

第5回 被告人質問(弁護人&検察官)この事件の審理も、いよいよ後半戦に差しかかってきた。被告人は事件を起こした後も、自らの頭で考えることをせず、社員寮の同僚から吹き込まれた言葉を鵜呑みにして、偽証を繰り返してきた。検察側にとっては歯がゆい思...