午前中、親父の工具の下見をするため、土手沿いの道を車で走らせていた。
前方にはレスキュー車とパトカーが並び、片道を完全に塞いでいる。
「これは、たぶん事故だな……」
そう思い、脇道へそれることにした。
入り込んだのは、狭い路地裏の道だった。
そこは、かつて私が苦学生だった頃に暮らしていた場所である。
長屋風の違法建築物が並び、惨めな生活と黒歴史が詰まった、苦い記憶の残る通りだ。
複雑な面持ちでその道を流してみると、かつての陰気さはすっかり姿を消していた。
土地改良が進み、そこは新興住宅地として生まれ変わっていたのである。
頼りなかった大家の家もなくなり、
忌まわしい思い出の長屋は、子洒落たアパートに建て替えられていた。
バイパス下という理由で、昼間でも暗く寂しかった一帯は、
道が広がり、新たな命を宿した町として再生していた。
その光景は、人の移り変わりを映す鏡のように思えた。
現在の空気を肌で受け止めながら、
私は静かに、月日の移ろいを噛みしめていた。
結局、工具は目新しいものが見つからず、
そのまま別のスーパーでクレープを食べて帰った。
迂回路にて。
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