2025-10

塀の向こう側日誌

【塀のない刑務所】自由と緊張が同居する松山刑務所──脱獄事件が教える現実

20代の頃、叔父の大工仕事を手伝っていた時期がある。その現場は、松山刑務所のすぐ隣にあった。休憩時間になると、作業員たちの話題は決まって「この前の脱獄未遂事件」だった。刑務官の車のタイヤ4本が一晩でなくなった、というのだ。ブロックをジャッキ...
塀の向こう側日誌

銃を向ける側と、素手で挑む側――日本の警察と“現場の法”の狭間で

「法が届かぬ瞬間に、命は誰のものでもなくなる──。」ニュースの片隅に、時折「警察が発砲」「被疑者死亡」という見出しを目にすることがあります。 日本では滅多に起きないこの種の事件。法の執行が届く前に“現場で終わる”ケースは、いわば「法と生の境...
法と苦楽詩(ほうとくらし)

💴 判決より先に「お仕事の成果報酬」のご案内

判決を待つ控え室で、裁判所職員の方から数枚の書類が配られました。その中の一枚に、今回の裁判員としての“お仕事の成果報酬”が記載されています。印鑑は不要で、自分の名前を直筆でサインすればOKという、ちょっとした契約書スタイル。名前の横にサラリ...
法と苦楽詩(ほうとくらし)

第2回:冒頭手続と裁判員控え室の雑学ポイント

裁判員選考から4日ほど経過し、第2回目の手続きに入りました。この日は法廷で行われる冒頭手続がメインです。被告人の罪状や公判の進め方など、裁判員として確認する場面になります。私は集合時間を確認しきれず少々遅刻しましたが、裁判所の方は意外に柔軟...
塀の向こう側日誌

塀の向こう側日誌①刑務所と拘置所の違い、あなたは説明できますか?――“塀の向こう側”の入口で見えてくる現実

はじめにニュースで「刑務所に収監」「拘置所での面会」といった言葉を耳にすることはありますが、その違いを正確に説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。どちらも“塀の中”にある場所。ですが、その役割も目的も、そこで過ごす人たちの立場も、...
法と苦楽詩(ほうとくらし)

第12回 再び、いつもの一日へ

判決の日から数日が過ぎた。 朝、いつものようにコーヒーを淹れ、窓を開けると、冷たい風が頬を撫でた。 何も変わっていないようで、どこか違っている。 そんな感覚が、まだ胸の奥に残っている。 あの法廷で見た光景は、今も記憶の奥で静かに息づいている...
法と苦楽詩(ほうとくらし)

第11回 : 判決後の沈黙 ( その2 )

第11回 判決後の沈黙 評議室を後にしたあの日から、奇妙な静けさが心の奥に沈んでいる。 誰に話すこともできないやり取り、沈黙の中でしか共有できなかった空気。 それは今でも、どこか胸の底に石のように残っている。 その夜は、たしか中秋の名月だっ...
法と苦楽詩(ほうとくらし)

第11回 : 判決後の沈黙 ( その1 )

― 補充裁判員席から見た最後の瞬間 ―法廷内は、張りつめた静寂に包まれていた。裁判長の声が響き、判決文が淡々と読み上げられていく。その響きが、天井から壁、そして傍聴席へと吸い込まれていくのを感じた。私は補充裁判員として、特別に設けられた席か...
法と苦楽詩(ほうとくらし)

⚖️ 第10回 判決文を読む裁判長を傍聴席から見る

◆ 裁判員最後の日――判決宣告後の視点で見えたもの裁判員としての任期最終日。法廷での判決宣告を終え、控え室で交わしたやり取りが、法廷の空気と裁判長の眼差しを改めて印象づけました。先日、補充裁判員としての最後の日を迎えました。傍聴席の指定席に...
法と苦楽詩(ほうとくらし)

第9.5回 補充裁判員2から見た自由人的な視点で語る

🇻🇳 異国で働くベトナム人実習生たち──社会主義が残した「依存の影」◆ 導入:法廷で感じた“思想の残響”日本の法廷で、ひとりのベトナム人技能実習生が殺人未遂の罪に問われた。半年という短い滞在期間での犯行。だが、私が評議の場で感じたのは、単な...